前回は自宅のWi-FiルーターをNECのAterm WG600HPからBuffaloのbuffaloのWXR-1750DHPに買い換えたことを紹介しました。
今回はこのWXR-1750DHPのWi-Fi性能をチェックしたいと思います。
機材・条件
性能をチェックするために使用した機材を紹介しておきます。
Wi-Fiルーターは下記の2台です。
- Baffalo AirStation WXR-1750DHP
- 5GHz: 802.11ac 最大867Mbps
- 2.4GHz: 802.11n 最大450Mbps
- NEC Aterm WG600HP
- 5GHz: 802.11n 最大300Mbps
- 2.4GHz: 802.11n 最大300Mbps
またクライアントについてはスマホを2台用意しました。
いずれも中華スマホでWi-Fiは802.11a/b/g/n/ac対応です。しかし、2×2には対応していないので最大433Mbpsだと思います。Mi5sの方がCPUがSnapdragon 821なのでハイエンドスマホ、Redmi Note 4の方がCPUがMediaTek Helio X20なのでミドルクラスと考えてください。
通信速度の測定にはiperf3というソフトウエアを使っています。
スマートフォン側にはMagic iperfというソフトを利用しました。通信速度はiperf3を30秒実行し、その結果を利用しています。
以降では通信速度の単位はすべてMbpsです。
また、「送信」というときはスマートフォンからの送信、「受信」はスマートフォンへの受信速度を表します。
通常は受信することが多いので「受信」の速度を注目するとよいと思います。
AirStation WXR-1750DHPの後継モデルはWXR-1751DHP2になります。
Wi-Fi通信速度の調査
まずはWi-Fiルーターとスマホを近く(1m程度)において、電波が確実に届く状態でいろいろ条件を振って速度を測定してみました。
5GHzでの比較
まずはWi-Fiルーターとスマートフォンを5GHzで接続しての測定です。接続図は次のようになります。
実際に5GHzで接続してみると、Wi-FiルーターがWXR-1750DHPの場合はリンク速度が433Mbps (802.11ac)で、WG600HPの場合はリンク速度は150Mbps (802.11n)となりました。
このときの測定結果は以下の通りです。
Wi-Fiルーター | スマホ | リンク速度 | 送信 | 受信 |
---|---|---|---|---|
WXR-1750DHP | Mi5s | 433 | 164 | 314 |
Redmi Note 4 | 433 | 215 | 160 | |
WG600HP | Mi5s | 433 | 114 | 116 |
WG600HPの方はRedmi Note 4では測定していません。実はあとからWXR-1750DHPを測定したときに思ったより早くなかったので、追加してRedmi Note 4で測定したのでこうなっています。
リンク速度はWXR-1750DHPの方が3倍ぐらい速いのですが、実際の速度ではそれほど差が出ませんでした。
スマホだと802.11acの実力を活かし切れていないのでしょうか。
ちょっと気になるのは、WXR-1750DHPの場合に速度が低下することがある点です。スマホをRedmi Note 4としたときには送信速度で240Mbpsほどデルのですが、30秒の測定のうち速度が100Mbps前後まで落ちる期間が4・5秒あります。このため30秒間を平均した通信速度では215Mbpsとなっているのです。
最初は電波干渉かと思ったのですが、何度やっても30秒のうち数秒は速度が低下するので、WXR-1750DHPの動作に何か癖があるのかもしれません。
2.4GHzでの比較
上記の5GHzとほぼ同じ状況で、今度は2.4GHzでWi-Fiを接続してみました。5GHzの場合は、WXR-1750DHPが802.11ac、WG600HPが802.11nと規格が異なっていましたが、2.4GHzの場合は両方とも802.11nで通信することになります。
このときにはリンク速度は150Mbpsになることを期待していたのですが、なぜかMi5sは72Mbpsでしかリンクしませんでした。またRedmi Note 4はWi-FiルーターがWG600HPの時は135Mbpsでリンクしました。
このときの測定結果は以下の通りです。
Wi-Fiルーター | スマホ | リンク速度 | 送信 | 受信 |
---|---|---|---|---|
WXR-1750DHP | Mi5s | 72 | 43.3 | 52.5 |
Redmi Note 4 | 150 | 94.2 | 105 | |
WG600HP | Mi5s | 72 | 43.4 | 40.4 |
Redmi Note 4 | 135 | 58.5 | 84.5 |
同じ802.11nの場合は、若干WXR-1750DHPの方が早いという結果になりました。
5GHzを2本使った場合の比較
次に5GHzで2台のスマホをWi-Fiルーターに接続し、同時にiperf3を実行して速度を測ってみました。
この場合、電波を分け合って通信するので、Wi-Fiルーターの性能を見るために二つのスマホの通信速度を合計して見ます。
Wi-Fiルーター | 送信 | 受信 |
---|---|---|
WXR-1750DHP | 199.8 (82.8 + 1147) | 260.4 (198 + 62.4) |
WG600HP | 111.8 (68.9 + 42.0) | 62.2 (17.8 + 44.4) |
受信速度で4倍以上の差がつきました。
5GHzで1台だけで通信した場合にWG600DPの受信は116Mbpsでたのですが、2台同時に通信した場合の合計は62.2Mbpsと半分近くにスループットが落ちています。
WG600HPは複数のクラアントがつながるケースでは通信速度が落ちやすいのかもしれません。
2.4GHzを2本使った場合の比較
同様に2.4GHzで2台のスマホをWi-Fiルーターに接続し、同時にiperf3を実行してみました。
今回も結果は合計で示しています。
Wi-Fiルーター | 送信 | 受信 |
---|---|---|
WXR-1750DHP | 60.4 (30.4 + 30.0) | 53.6 (26.0 + 27.6) |
WG600HP | 59.9 (20.9 + 39.0) | 62.2 (17.8 + 44.4) |
5GHzと2.4GHzを1本ずつ使った場合の比較
最後に5GHzと2.4GHzにスマホを1台ずつ接続して同時にiperf3を実行してみました。
5GHzと2.4GHzはお互いに干渉しないので、それぞれが単体で通信した場合と同様の通信速度が出ることをが期待されます。
以下が結果です。括弧内の数値は単体で実行したときの速度です。
Wi-Fiルーター | スマホ | 送信 | 受信 |
---|---|---|---|
WXR-1750DHP | 5GHz (Mi5s) | 155 (164) | 270 (314) |
2.4GHz (Redmi Note 4) | 80.3 (94.2) | 88.4 (105) | |
WG600HP | 5GHz (Redmi Note 4) | 103 (114←Mi5s) | 89 (116←Mi5s) |
2.4GHz (Mi5s) | 42.9 (58.5) | 42 (84.5) |
実は、Mi5sは2.4GHzだとリンク速度の上限が72Mbpsのようなので、Mi5sを5GHzで使いRedmi Note 4を2.4GHzとするべきでした。
なのでここでは絶対的な数値ではなく、単体で測定したときとの比較を見てみます。
WXR-1750DHPの場合は、全体的に単体で測定したときから10%ほど通信速度が低下しています。5GHzと2.4GHzの電波は干渉しないとはいえ、データを中継するWXR-1750DHPは同時に二つの通信処理をお粉分ければならないので、単体よりも通信速度が落ちてしまうのでしょう。
一方、WG600HPの場合は、速度の低下の割合が大きくなっています。特に2.4GHzの受信については通信速度が半分になってしまっています。WG600HPはシングルコアCPUのため複数の通信を同時に扱うのはあまり得意ではないのかもしれません。
電波の到達距離の調査
次にWi-Fiルーターから距離を離して通信速度を測定しました。
測定環境は、距離1m・距離2.5m(扉1枚)・距離5m(扉2枚)・お風呂の中の4つです。
扉というのは普通の家の扉で、1枚目が木製・2枚目が木枠にガラスとなっています。
環境を模式的に表すと下記のような感じです。
5GHzでの比較
5GHzでの通信にはMi5sを使いました。
結果は次の通りです。先ほどまでの表と違って、縦に見てください。WG600HPのリンク速度はチェックするのを忘れました。
WXR-1750DHP | WG600HP | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
条件 | リンク速度 | 送信 | 受信 | リンク速度 | 送信 | 受信 |
1m | 433 | 164 | 314 | – | 114 | 116 |
2.5m | 292 | 141 | 282 | – | 104 | 116 |
5m | 195 | 122 | 237 | – | 88.6 | 117 |
お風呂 | 130 | 94.7 | 135 | 90 | 47.2 | 35.9 |
WXR-1750DHPが802.11ac、WG600HPが802.11nということで直接比較することはできません。
従って一番よい条件から、条件が悪くなるにつれ速度がどれくらい低下するのか、ということに着目した方が良さそうです。
ということで1mの時の通信速度を基準として速度低下を表すグラフを作成してみました。
送信に関してはいずれも条件が悪くなるつれ送信速度が低下しています。差が出るのはお風呂です。WG600HPでは1mの時の40%まで低下しましたが、WXR-1750DHPでは60%でこらえています。
受信についてはWG600HPの方が5mまでは速度が低下せず、安定していることがわかります。これは、WG600HPの5GHzで使用している802.11nの方がノイズなどに強いからではないかと思います。
一方、一番条件が悪いお風呂でははやりWG600HPの方の落ち込みが大きくなっています。
このことからいくと、WXR-1750DHPの大型アンテナの効果がお風呂で出ていると言えそうですが、同条件となる2.4GHzで比較した方が良さそうです。
802.11acの方が高速で通信するということは、通信の条件として厳しいものがあります(高速な通信の方がノイズなどの外乱に対して弱くなるケースが多いです)。
従って、802.11acの低下が802.11nとの低下と同程度ということは、実はかなり頑張っているといえるかもしれません。
2.4GHzでの比較
5GHzと同様の条件で、2.4GHzで接続して速度を測定してみました。クライアントにはRedmi Note 4を使いました。
結果は次の通りです。
WXR-1750DHP | WG600HP | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
条件 | リンク速度 | 送信 | 受信 | リンク速度 | 送信 | 受信 |
1m | 150 | 94.4 | 105 | 135 | 58.5 | 84.5 |
2.5m | 150 | 62.9 | 85.2 | 135 | 60.7 | 77.3 |
5m | 150 | 57.9 | 80.5 | 54 | 20.3 | 73.5 |
お風呂 | 40 | 15.7 | 38.8 | 27 | 3.51 | 23 |
2.4GHzではWXR-1750DHPとWG600HPは共通して802.11nを使用しているので、今回は通信速度そのもので比較できます。
そこで、今度は縦軸を通信速度としてグラフにしてみました。
送信・受信の両方で常にWXR-1750DHPの方が早いという結果となりました。条件がよい1mの時でもWXR-1750DHPの方が早いので基本性能の違いということもあると思いますが、はやりWXR-1750DHPの大型アンテナが効いているのだと思います。
ただし、お風呂の測定ではちょっと注意する点がありました。
WXR-1750DHPで通信速度を測定(30秒間)すると、調子がよいときには受信速度が43Mbps程度まで速度が出るのですが、一転 0Mbps (通信が詰まってしまう)時がありました。今回の結果の受信速度38.8Mbpsというのは30秒間の平均です。
一方、WG600HPの方は、通信が詰まってしまうことはなく、速度が低下してもギリギリまで粘るという感じでした。
従って、WG600HPはアンテナが小さいので電波の強度は弱いものの、アンテナを巧みに制御して受信性能を上げているということができるかもしれません。
AirStation WXR-1750DHPの後継モデルはWXR-1751DHP2になります。
まとめ
今回はWXR-1750DHPのWi-Fi性能を調査してみました。
比較対象は802.11acに対応していないWG600HPなので公平な比較というわけではありませんが、WXR-1750DHPはデュアルコア・大型アンテナということで同時にWi-Fi通信がある場合や、通信距離が長い場合に有利であることを確認できました。
次回はWXR-1750DHPのインターネット接続性能(ルーティング性能)をチェックしたいと思います。
コメント