今回はGaNを採用したUSBチャージャーの紹介です。
GaN (窒化ガリウム)
GaNとは窒化ガリウムの化学式です。
窒化ガリウムはエネルギー効率に優れた半導体とされ、近年は充電器などの電力制御を行う半導体に活用されています。
GaNをUSBチャージャーに活用すると、サイズならば高出力に、同じ出力なら小型にすることができ、近年採用が増えています。
最近はノートPCなどのデバイスもUSB PD (USB Power Delivery)に対応しており、USBチャージャーで充電・給電できるようになってきます。
ノートPCの充電には45Wや65Wなどの高出力のUSBチャージャーが必要になりますが、GaN採用のUSBチャージャーであれば小さいなサイズになることが期待できます。
細かいことは置いておいて「高出力で小型のUSBチャージャーを探すなら【GaN】がキーワード」と考えておけばOKと思います。
持ち運び用のGaN採用USBチャージャーを追加する
先日は持ち運び用のチャージャーとして「Toocki」という会社のGaN採用USBチャージャーを購入したことを紹介しました。
この製品は最大67W出力で、USB Type-C×2・USBスタンダードA×1の合計3ポートありながら、コンパクトでなかなか良い製品でした。
この手の製品はカバンに入れっぱなしということもあるので、複数持っていても困るものではありません。
そこでもう一個買おうと思ったのですが、同じものを買ってもつまらないので違う製品を買ってみることにしました。
そこで見つけたのがBaseusというブランドの製品です。
Baseusは既に日本に参入していますが、この記事作成時点ではこのUSBチャージャーは日本市場には投入していないようです。
最大出力は65W、ポートはUSB Type-C×2、USBスタンダードA×1ということで、以前購入したToockiのUSBチャージャーにかなり近いものがあります。
比較しつつレビューをしたいと思います。
Baseus GaN5 Pro Fast Charger 2C+U 65W
今回は海外通販のAliExpressで購入することにしました。
AliExpressは全世界を対象に販売しているので、日本のコンセントにささらないプラグの製品も取り扱っています。
購入する際は「USプラグ」となっている製品を探しましょう。アメリカのコンセントは日本と同じ平形です。
私は2023年11月の11.11セールのタイミングでこの製品を購入したところ、各種割引きがあり21.24ドルの支払い(送料1.49ドルを含む)で購入することができました。1ドル150円とすると3186円になります。
海外通販というと配送が心配ですがこの製品は注文から10日程度で到着しました。なかなか順調な配送でした。
パッケージはこんな感じです。今回は黒色を購入しました。
写真ではちょっと見にくいですが左下には「Gan5 Pro FAST CHARGER 2C+U 65W US」と書かれています。
パッケージの背面にはスペックなどの情報が4か国語で書かれています。
この4か国語には日本語も含まれています。
日本語の部分を拡大すると次のようになります。
これを文字に起こすと次のようになります。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | GaN5 Proファーストチャージャー |
型番 | CCGAN65S5 |
入力 | AC 100-240V, 50/60Hz, 1.5A 最大値 |
Type-C1/Type-C2出力 | 5V=3A; 9V=3A; 12V=3A; 15V=3A; 20V=3.25A 最大値 |
USB出力 | 5V=3A; 9V=3A; 12V=3A; 20V=3A 最大値 |
Type-C1+Type-C2 出力 | 45W+20W 最大値 |
Type-C1+USB出力 | 45W+18W 最大値 |
Type-C2+USB出力 | 5V=3A 15W 最大値 |
Type-C1+(Type-C2+USB)出力 | 45W+15W最大値 |
18W | 5V=3A; 9V=2A; 12V=1.5A 最大値 |
20W | 5V=3A; 9V=2.22A; 12V=1.67A 最大値 |
45W | 5V=3A; 9V=3A; 12V=3A; 15V=3A; 20V=2.25A 最大値 |
製品サイズ | 61×36.3×32mm |
製品重量 | 約117g |
名称 | ミニホワイトシリーズ急速充電データケーブル |
素材 | TPE |
電流 | 5A(20V=5A 100W, Eマーカーチップ付き) |
インターフェース | Type-C-Type-C |
長さ | 1m |
「USB出力」というのはUSBスタンダードAポートの出力のようです。
最大の65Wと引き出せるのはUSB Type-Cポートのいずれか一方だけを使ったときであることがわかります。
USB Type-CポートとスタンダードAポートを併用すると、USB Type-C1を利用した場合は45Wと18Wの合計63Wが最大となりますが、USB Type-C2の方を利用した場合は合計で15Wとなってしまうようです。
複数ポートを併用する場合はUSB Type-Cポートは1の方が大きな電力を引き出しやすいので、こちらを優先して使う方が良さそうです。
USBチャージャーの形状は直方体です。
側面にはブランド名の「Baseus」が書かれています。
別の側面には「IEC 62368-1」という安全規格に関する情報が書かれています。
また「65W」とモデル名などが書かれている側面もあります。
コンセントに差すプラグがある面にはスペック等が記載されています。が、文字が小さいため少々見づらいです。
プラグは折りたたみ式のため、持ち運び時にはコンパクトになります。
プラグを折りたたんだときには側面からプラグが若干はみ出す形になり、ここに指をかけることで簡単にプラグを立てることができます。
USBケーブルを挿す面はプラグと反対側になります。
充電用のポートはUSB Type-Cが2個、USBスタンダードAが1個になります。
USB-C1とUSB-C2は全く同じに見えますが、上述の通り複数ポートを同時に使う際にはUSB-C1の方が大電力を出力できるようになっています。
重量はスペックは117グラムで、実測では116グラムでした。
サイズがコンパクトなだけあって手に持った感じは思ったよりズッシリと感じます。しかし、スカスカのUSBチャージャーだと逆に不安になるので、これくらいの重さの方が作りがしっかりしている感があって良いかもしれません。
説明書はパッケージと同様に4か国語で記載されており、日本語のページもあります。
日本語のページは次のようになります。
パッケージに記載されていた上に加え、このUSBチャージャーが「USB PD (Power Delivery)」規格だけでなく「QC3.0 (Qualcommの規格)」「SCP (Huaweiの規格)」「FCP (Huaweiの規格)」「AFC (Samsungの規格)」に対応していることが記載されています。
また「PPS (Programmable Power Supply)」にも対応していることがわかります。
PPSについては下記を参照してください。
ただ、PPSでどの範囲の制御ができるのかは記載されていません。
取扱説明書のほかにはUSBケーブルがついています。
このケーブルはUSB Type-Cになっていて長さは1mです。パッケージの情報によると100Wの給電に対応しているとのことですので、USBチャージャーの能力を引き出すことができます。
プラグやバンドにBaseusのロゴがあるのでほかのケーブルと見分けがつけやすいのはよい点です。
類似製品(Toocki 67W GaN USB Charger)と比較してみる
先日レビューしたToockiというブランドのUSBチャージャーが、スペックが近いので比較してみます。
まずスペックを比較すると次のようになります。
項目 | BaseusのUSBチャージャー | ToockiのUSBチャージャー |
---|---|---|
出力ポート | USB Type-C×2 USBスタンダードA×1 |
USB Type-C×2 USBスタンダードA×1 |
入力 | AC 100-240V 50/60Hz 1.5A |
AC 100-240V 50/60Hz 1.5A |
USB-C1 | 5V=3A 9V=3A 12V=3A 15V=3A 20V=3.25A (最大65W) |
5V=3A 9V=3A 12V=3A 15V=3A 20V=3.35A (最大67W) |
USB-C2 | 5V=3A 9V=3A 12V=3A 15V=3A 20V=3.25A (最大65W) |
5V=3A 9V=3A 12V=3A 15V=3A 20V=3.35A (最大67W) |
USAB-A | 5V=3A 9V=3A 12V=3A 20V=3A (最大60W) |
4.5V=5A 5V=4.5A 9V=2A 12V=1.5A (最大22.5W) |
USB-C1+USB-C2 | 45W+20W | 45W+20W |
USB-C1+USB-A | 45W+18W | 45W+18W |
USB-C2+USB-A | 5V=3A | 5V=3.6A |
USB-C1+USB-C2+USB-A | 45W+15W | 45W+18W |
サイズ | 61×36.3×32mm | 60×37×32mm |
重量 | 約117g | 約109g |
スペックは非常に似通っていることがわかります。
USBスタンダードAポートを単独で使った場合に、Baseusの方が最大出力がかなり大きい点が目立つ違いです。
その他の違いはわずか数ワットなので気にすることはないと思います。
QuickCharge 3.0では60Wの出力はサポートしていないため、おそらくメーカー(HuaweiやSamsung)独自の方式を利用した場合だと思います。
USB Type-Cポートでの給電がメインであればどちらを購入しても差はなさそうです。
写真を見てもぱっと見はサイズの違いもわかりません。
長さもほとんど同じです。
ポートがある面を見ると若干Toockiの方が大きいようです。
写真では結構さがあるように見えますがスペックでも実測でも差は1mmです。
実際に使ってみる
それでは今回購入したUSBチャージャーで充電してみます。
USBケーブル
USBケーブルはUSBチャージャーについてきたものを利用しました。
このケーブルは100W対応とされています。
充電対象
充電対象には2台のデバイスを用意しました。
ひとつ目はスマートフォンのPixel 4です。
Pixel 4のスペックはGoogleの記載されています。
このスペックによるとUSB PDに対応しており最大18Wでの急速充電ができる、ということになっています。
ふたつ目はモバイルPCのSurface Pro 7です。
Surface 7 Proのスペックはマイクロソフトのサイトに掲載されていますが、充電に関するスペックはありません。
以前、100W出力を公称するUSBチャージャーを使ったときに40~50Wで充電できた実績があります。
実験結果
実験は単純にUSBチャージャーと充電対象デバイスをUSBケーブルでつなげて充電を行いそのときの電圧・電流をチェックするというものです。
電圧・電流のチェックには下記のUSBチェッカーを利用しました。
まずはPixel 4を充電した結果です。
この瞬間は電圧は9.04V、電流は1.72A、電力は15.53Wになっています。しばらく充電状態を確認すると、電圧は約9Vで固定となり、電流は1.0~1.7Vで変動する感じでした。
このグラフでは緑のラインが電圧、青いラインが電流、黄色いラインが電力となっています。電圧がほぼ一定で、電流と電力は変動していることがわかると思います。
Pixel 4のスペック上限である18W(9V=2A)には到達していませんが、9Vで充電できているのでUSB PDでの動作になっていると思われます。
電流が2Aに到達しないのは、Pixel 4側の事情だと思います。
続いてSurface 7 Proへの充電です。
充電を開始するとすぐに20Vでの充電が開始されました。電流は2.74Aなので電力は54.99Wとなりました。
しばらく充電状況を確認するとで電圧は約20Vで固定され、電流は1.0~2.5Vで変動する感じとなりました。
以前にテストした100WのUSBチャージャーでも同様の状況でした。
このUSBチャージャーはSurface 7 Proの充電にも十分使えそうです。
まとめ
今回はAliExpressで購入したBaseusというブランドのUSBチャージャーを紹介しました。
窒化ガリウム(GaN)採用のためコンパクトながら65Wの出力が可能で、モバイルPCであるSurface 7 Proの充電も可能です。
ただ中華製品の割には高価なので値段を追求するならToockiなどの別ブランドをおすすめします。
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