前回はRTX3060MというGPUを搭載したグラフィックスカードのドライバにつて紹介しました。
今回はこのグラフィックスカードの実力をベンチマークなどで調べてみたいと思います。
ベンチマークの方針と比較対象
GPUの実力を測るということで、まずはゲームのベンチマークソフトを試してみることにしました。
利用するのは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマーク」と「BLUE PROTOCOLベンチマーク」です。
これらのベンチマークによるスコアはインターネット上で見つけることができ他のGPUとの比較にも使えます。
また今回購入したRTX3060MのグラフィックスカードはVRAMを12GB搭載しており、AI・機械学習用途に使えそうです。
そこで「Stable Diffusion Web UI(AUTOMATIC1111)」を導入し、画像生成の速度を測定してみることにしました。下記のサイトを参考にしてWindows上にインストールしています。
なお、ゲームのベンチマークおよびStable Diffusionによる画像生成は、以前に使っていたグラフィックスカードである「Colorful iGame GTX 1660 Ultra」でも行っておきまたので、結果の紹介時には比較として使いたいと思います。
なお、GPU-ZでRTX3060MとGTX1660 Ultraを比較すると次のようになります。
RTX3060MのほうがShader数(Cudaコア数)などはかなり多くなり、メモリのバンド幅も広くなりますが、GPUのクロックとしてはGTX1660 Ultraのほうが高くなります。
このようなスペックの違いがどう影響するか興味深いところです。
ゲームのベンチマーク結果
まず初めにゲームのベンチマークの結果を紹介します。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマーク
ベンチマークの条件として
- 4K(3840×2160) / 高画質 / フルスクリーン
- FHD(1920×1080) / 高画質 / ウィンドウ
の2パターンで行いました。
まずは4Kでの結果です。
スコアは「3349」とあまり高くなく、評価は「普通」です。ゲームプレーは可能ですが、高フレームレートでの表示は期待できない感じです。
FHDでの結果は次のようなりました。
スコアは「7583」となり「快適」という評価です。この評価であれば問題なくゲームを楽しめそうです。
これらの結果を以前所有していたGTX1660 Ultraの結果と比較したのが下記の表です。
解像度 | 設定 | スコア (RTX3060M) |
スコア (GTX1660 Ultra) |
---|---|---|---|
4K | 高画質 | 3349 (普通) |
2257 (重い) |
FHD | 高画質 | 7583 (快適) |
5536 (やや快適) |
グラフにすると次のとおりです。
GTX1660 UltraよりGPUクロックが低いことを懸念していましたが、GPUとしてのアーキテクチャの新しさや、メモリバンド幅の向上などにより、RTX3060Mのほうがスコアが大きく改善されていることがわかります。
気になるのはデスクトップ版のRTX3060との違いだと思います。
インターネットで検索してみると、RTX3060の12GB版で同じベンチマークを実行している結果がありました。
スコアを比較してみると次のようになります。
解像度 | 設定 | スコア(RTX3060M) | スコア(RTX3060) |
---|---|---|---|
4K | 高画質 | 3349 | 3858 |
FHD | 高画質 | 7583 | 8934 |
RTX3060Mはモバイル向けのGPUということで、デスクトップ向けのRTX3060よりはクロックが抑えられているせいか、デスクトップ版のRTX3060よりもスコアが低めに出ていることがわかります。
ただし、CPUやマザーボードなどの条件が違うので、このRTX3060との比較は参考程度と考えてください。
BLUE PROTOCOLベンチマーク
ベンチマークの条件として
- 4K(3840×2180) / 最高画質 / 仮想フルスクリーン
- FHD(1920×1080) / 最高画質 / ウィンドウ
の2パターンで行いました。
まずは4Kでの結果です。
スコアは「4668」で評価は「設定変更が必要」となっています。人間の目にはそれなりに表示されていたように思ったのですが、フレームレートが十分に出ていなかったのだと思います。RTX3060Mでは4Kでのプレーは厳しそうです。
FHDでの結果は次のようになりました。
こちらはスコアが「13575」と大きく改善し、評価も「極めて快適」となっています。RTX3060Mを使ってBLUE PROTOCOLをプレーする場合はFHDあたりがちょうど良さそうです。
これらの結果を以前所有していたGTX1660 Ultraの結果と比較したのが下記の表です。
解像度 | 設定 | スコア (RTX3060M) |
スコア (GTX1660 Ultra) |
---|---|---|---|
4K | 最高画質 | 4668 (設定変更が必要) |
3057 (動作困難) |
FHD | 最高画質 | 13575 (極めて快適) |
9900 (とても快適) |
グラフにすると次のとおりです。
スコアの数値は違いますが、RTX3060Mは4Kだと約1.5倍、FHDだと1.3~1.4倍のスコアと、FINAL FANTASY IVベンチマークとほぼ同様の傾向となりました。
AIのベンチマーク
AIのベンチマークは「Stable Diffusion Web UI(AUTOMATIC1111)」をインストールして、デフォルトの設定で画像を生成したときの時間を測定しました。
今回は「piglet wearing sunglass (サングラスを掛けた子豚)」というプロンプトで画像を生成して、画像生成完了時に表示される時間を記録しました。
画像の生成時間にはばらつきがあるので、5回実施するものとします。
結果は次のようになりました。
GPU | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
RTX3060M (12GB) | 4.5秒 | 4.1秒 | 4.0秒 | 4.1秒 | 4.0秒 | 4.14秒 |
GTX1660 Ultra (6GB) | 92.2秒 | 70.0秒 | 71.1秒 | 52.9秒 | 69.6秒 | 71.2秒 |
VRAMを12GB搭載していることが効いているのか、AI処理にに有効なTensorコアを搭載してるのが効いているのかはわかりませんが、RTX3060Mのほうが圧倒的に短時間で画像生成が完了しました。
12GBのRAMを搭載しているRTX3060のグラフィックスカードはよくAI入門用としておすすめに上がりますが、今回購入したRTX3060Mのグラフィックスカードも同様と言えそうです。
ベンチマーク中のグラフィックスカードの状態
HWiNFO64というツールを使うとグラフィックスカード・GPUに関する様々な情報を取得することができます。
RTX3060Mグラフィックスカードの場合は次のような項目が表示されました。
そこでFinal Fantasy IVベンチマーク実行中のデータを取得し、いくつかのデータに関してグラフ化してみました。
まずは温度関係のグラフです。
ベンチマークの実行中は徐々に温度が上昇して、GPUホットスポット温度は50℃を超えていることがわかります。ベンチマークが終了して温度が下がってしまいましたが、このグラフの様子だとあと数度は高くなりそうです。
ただ、温度リミットは87度のようなので、全然余裕がある状態ということになります。実際、GPUのファンも1300RPM付近で安定しており、非常に静音です。
消費電力をグラフにすると次のようになります。
ベンチマーク実行中は消費電力が上がっていますが、それでも75W程度に収まっています。実は私のPCの電源の容量は600Wで少し不安だったのですが、ベンチマーク実行中でも75W程度しか消費しないのであれば、6000Wの電源でも問題なさそうです。
次にGPUのクロックとGPUメモリのクロックです。
GPUクロックは2000MHzを超えるタイミングがあるものの、ベンチマーク実行中は概ね1550MHz付近となっています。GPU-ZではGPUのブーストクロックは1425MHzとレポートされており、それを超えるクロックで動作していることになっています。
HWiNFO64でレポートされる値が間違っているのか、GPU-Zで表示される情報が間違っているのか、どちらなのかは不明です。
GPUメモリクロックに関しては多少の上下があるもののベンチマーク実行中は1750 MHzとなっています。この値はGPU-Zで報告されるメモリクロックと一致しています。
最後にGPUなどの使用率をグラフにしてみました。
ベンチマーク実行中はGPUコア使用率はほぼ100%に張り付いていますが、メモリ関係・バス関係については十分余裕がある感じです。Final Fantasy IVベンチマークのスコアはGPUコアの処理能力がボトルネックになっていたと推測できます。
まとめ
今回はRTX3060Mという怪しいグラフィックスカードの実力をベンチマーク等で測定してみました。
RTX3060シリーズということで、ゲーム性能はそこそこという感じです。しかし、12GBのメモリを搭載していることもあり、AI処理能力は十分あると感じられました。
AI・機械学習の入門モデルとしては十分使える印象をうけるグラフィックスカードです。
次回はこのグラフィックスカードをしばらく使った感想を紹介します。
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